背景乳腺ってなに?高濃度乳房(デンスブレスト)と言われたら知っておきたいこと

乳がん検診の結果用紙に「高濃度乳房」「乳房の構成:不均一高濃度」と書かれていて、「何か悪いものが見つかったの?」と心配になった経験はありませんか。また、検診や精密検査の説明で「背景乳腺」という言葉を耳にされた方もいるかもしれません。
前回の記事「10月はピンクリボン月間|なぜ10月?乳がん検診は毎年?2年に1回?」でも少し触れましたが、今回は「背景乳腺」と「高濃度乳房(デンスブレスト)」について、乳腺専門医の立場から詳しく解説します。
「背景乳腺」とは?
乳房は、主に「乳腺」と「脂肪」でできています。乳腺は母乳をつくって運ぶための組織で、その周りを脂肪が包んでいます。
「背景乳腺」とは、しこりなどの病変の"背景"にある、正常な乳腺組織のことです。検査の画像を見るとき、私たち医師は「背景にある乳腺の中に、いつもと違う影がないか」を探しています。
マンモグラフィでは、乳腺は白く、脂肪は黒っぽく写ります。そして、乳がんのしこりも白く写ります。脂肪が多い乳房なら、黒い背景の中に白いしこりが浮かび上がるので見つけやすいのですが、乳腺が多い乳房では背景全体が白くなり、しこりが紛れてしまうことがあります。よく「雪原の中で白うさぎを探すようなもの」とたとえられます。
乳房のタイプは4つに分けられます
マンモグラフィでは、乳腺と脂肪の割合によって、乳房を次の4つのタイプ(乳房の構成)に分けます。
| タイプ | 特徴 | 40歳以上での割合(目安) |
|---|---|---|
| 脂肪性 | ほとんどが脂肪 | 約5% |
| 乳腺散在 | 脂肪の中に乳腺が散らばっている | 約58% |
| 不均一高濃度 | 乳腺が多く、ところどころ白く写る | 約35% |
| 極めて高濃度 | 乳腺が非常に多く、ほぼ全体が白く写る | 約2% |
このうち「不均一高濃度」と「極めて高濃度」をあわせて「高濃度乳房(デンスブレスト)」と呼びます。40歳以上の女性の約4割が高濃度乳房と推測されています。特に40代では割合が高く、6割前後にのぼるという報告もあります。
高濃度乳房は「病気」ではありません
ここがいちばん大切なポイントです。高濃度乳房は病気でも異常でもなく、体質のひとつです。高濃度乳房と言われても、それだけで「要精密検査」になるわけではありません。
乳房のタイプは一生同じではありません。一般的に、年齢を重ねるにつれて乳腺は脂肪に置き換わり、閉経後は高濃度乳房の割合が下がっていきます。ほかにも、出産・授乳の経験、体重の増減、女性ホルモン剤の使用などでも変化します。そのため、前回の検診と今回の検診で判定が変わることも珍しくありません。
なお、高濃度乳房は乳がんになりやすさにやや関係するとも言われていますが、「高濃度だから乳がんになる」というわけではありません。必要以上に心配しすぎないでください。
高濃度乳房で気をつけたいこと
高濃度乳房で問題になるのは、乳がんそのものではなく「マンモグラフィでしこりが見えにくくなる」ことです。先ほどの「雪原の白うさぎ」の状態ですね。
ただし、マンモグラフィが役に立たないわけではありません。マンモグラフィは、乳がんのサインになる小さな「石灰化」を見つけるのが得意で、死亡率を下げる効果が確認されている唯一の検診方法です。高濃度乳房の方も、マンモグラフィ検診をやめる必要はありません。
エコー(乳腺超音波検査)を組み合わせるとどうなる?
エコーは、乳腺の濃さに関係なくしこりを見つけやすいという特長があります。マンモグラフィとエコーの違いについては、「乳がん検診って何をするの?始める年齢とマンモグラフィ・エコーの違いをわかりやすく解説」で詳しくご紹介しています。
日本では、40代の女性約7万人を対象に、「マンモグラフィだけ」と「マンモグラフィ+エコー」の検診を比べる大規模な研究(J-START)が行われました。その結果、エコーを加えることで早期の乳がんが約1.5倍多く見つかることがわかりました。さらに2026年には長期の追跡結果が発表され、エコーを加えた人たちでは、進行した乳がんが減っていたことも報告されています。
一方で、エコーを加えると「がんではないのに要精密検査」となるケースも増えます。また、乳がんで亡くなる方を減らす効果までは、まだ確認されていません。そのため、現在の市町村の検診ではエコーは標準ではなく、国でも検診への導入について議論が進められているところです。
「高濃度乳房」と言われたら、どうすればいい?
結果に書かれていなくても高濃度の可能性はあります
乳房のタイプを結果で通知するかどうかは、自治体や検診機関によって異なります。結果用紙に書かれていないからといって、高濃度乳房ではないとは限りません。気になる方は、検診を受けた機関に確認してみてください。
まずは慌てなくて大丈夫
高濃度乳房と書かれていても、「異常なし」の判定であれば、すぐに病院に行く必要はありません。
次回の検診でエコーの追加を検討
40代の方や、高濃度乳房と言われた方は、マンモグラフィにエコーを組み合わせた検診をおすすめします。エコーは市町村の検診には含まれないことが多いため、人間ドックや医療機関の検診(自費)で追加するのが一般的です。ご家族に乳がん・卵巣がんの方がいる場合は、検診の間隔も含めて一度専門医にご相談ください。
症状があるときは、すぐに受診を
前回の記事でもお伝えしたとおり、しこりに触れる、乳頭から分泌物が出る、皮膚のひきつれがあるなど気になる変化があるときは、検診の結果や時期に関係なく、すぐに乳腺外科を受診してください。
当院での取り組み
当院では、乳腺エコーを院長自らが担当します。院長は、日本乳がん検診精度管理中央機構の「乳がん検診超音波検査実施・判定医師」の認定(A評価)を取得しています。マンモグラフィは、検診マンモグラフィ撮影認定を持つ女性技師が担当します。【要確認:マンモ+エコー同日実施の可否、自費エコーの料金表示など】
高濃度乳房かどうか、エコーを追加したほうがいいかどうかは、年齢やご家族の病歴などによって一人ひとり違います。当院は2027年3月に明石駅前で開院予定です。ご自身に合った検診の受け方を、一緒に考えていきましょう。
まとめ
- 「背景乳腺」とは、病変の背景にある正常な乳腺組織のこと
- 乳房は4つのタイプに分かれ、乳腺の多い2タイプを「高濃度乳房」と呼ぶ
- 高濃度乳房は病気ではなく体質。40歳以上の約4割、40代では6割前後
- 高濃度乳房ではマンモグラフィでしこりが見えにくくなることがある
- エコーを組み合わせると、早期乳がんの発見が増えることがわかっている
- 症状があるときは、検診を待たずにすぐ受診を
「高濃度乳房」という言葉に驚かれた方も、まずはご自身の乳房のタイプを知ることから始めてみてください。それが、自分に合った検診を選ぶ第一歩になります。

